中級から学ぶ(Bài 13)

中級から学ぶ(Bài 13)


出張途中の突然の飛行機事故で、主人が亡くなってもうすぐ三年になる。墜落の原因はいまだに不明だ。遺言も残さず、遺体も帰ってこなかった。「時間」に追われるような、こんな落ち着かない生活はもう嫌だ。給与も昇進も要らん。こんな調子で仕事を続けていたら、ストレスでしまいには死んでしまう。定年になったら田舎に引っ込んで時計とは縁のない生活をするぞ」商社に就職して二十年になる主人は、繰り返しこんなことを言っていた。時間に追われる毎日を何よりも嫌っていたその主人が私に残してくれた形見は、長い愛用していた古い型の腕時計であった。海外出張前に、「空港の免税店で新しいのを買うから」と言って残していった古い腕時計は、今も休まず動いている。

主人を亡くしてから、私は外出するときもパートに出るときも時計を持っていかないことにした。初めは少し不便だと感じることもあったが、慣れてくると不便どころか、かえって生活にゆとりさえ出てきた。時計を持たなくなったからといって、時間のことを全然考えずに生活しているわけでわないし、身の回りに時計が一つもないわけでもない。私の寝室には目覚まし時計があるし、ビデオや電子レンジ、それに炊飯器や洗濯機などの電化製品にまでデジタル表示の時計が付いている。パートの行き帰りにも、駅や銀行のビルなど、あちらこちらにある時計を見て、時間を確かめることができる。

時計を持たなくなって、私は自分が前ほど時間を気にしなくなっているのに気が付いた。まず、歩きながら「約束の時間まであと何分」と、何かにせき立てられて何度も何度も時計を見ることがなくなった。また、急ぐ用事もないのに電車を持ちながら何回も時計を見ていらいらすることもなくなったし、時計を合わせる必要もなくなった。

昔から腹時計などと言うが、私も時計を見なくてもだいたい時間が分かるようになった。「もうそろそろニュースの時計だろう」と見当を付けると、それが大きくは間違っていない。風呂を沸かしたりインスタントラーメンに湯を注いで時間を待つ時も、今では時計とにらめっこしなくてもよくなった。「もうできているはずだ、だいたい三分くらい経ったから」と、試してみるつもりで時計を見ると、それがほぼ正確だからである。私はこんな生活が気に入っている。

主人は出発前にどんな時計を買ったのだろうか。時間に追われるような気持ちで、何度も何度もその時計を見ているときに事故に遭ったのではないのだろうか。「田舎に引っ込まなくても、時計と縁のない生活はできますよ」私は今日も主人の形見にそう語りかけている。




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